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介護を通じて考えたことを書いていきます。

カルピスとアルマイトのヤカンの思い出

これも幼い頃の話。わたしが幼稚園生の頃、どこかの施設に訪問するという機会があった。いわゆる「慰問」というやつだけど、当時は何のことかわかっていなかったし、その記憶も非常におぼろげなものだ。



幼稚園からとある老人ホーム(だと思う)へ歩いて行ったことは記憶にあるのだけど、覚えているのは駅を超えた向こうの坂、ということ。その坂の記憶はあるのだけど、とにかく遠かったとしか記憶にない(昔の老人ホームは町から外れた場所にあるのが当たり前だった)。不思議なことに老人ホームの姿やそこで出会った人たちのことを全く覚えていないのだ。



そして、クタクタになって辿り着いた先で振る舞われたある飲み物のことだけが、なぜか頭に残っていた。



それはカルピスなのだけど、なぜ覚えているかというと、アルマイトのやかんにそのカルピスは入れられていたからだ。幼稚園でそのやかんから出てくるのはお茶だったから、そういうことにとても驚いた。もちろん、幼稚園では口にできないカルピスを飲ませてもらえたという単純な喜びもあったのだろうけど。



あの時、老人ホームで何をしたのか全く記憶がないのだけど、とても不思議なことがあって、おそらくその老人ホームと同じ法人の別の事業所に大人になって介護実習で訪れるという機会を得たのだ。そして、やっぱり昔そこで何をしたのか思い出せないけど、確かに来たことがあるということを思い出して、そしていまその老人ホームを自分の生業の場としていることを思い、いろいろと感慨深いものがあるなと感じたのだった。



ちなみに、わが施設内でも当然ながらカルピスは「嗜好品」なので、家族か本人がお金を出してわざわざ用意しないと飲めない飲み物の類である。一度、ユニット費で原液を買ってみなさんに作って振る舞ったこともあるけど(もちろん大喜び)、カルピス程度ですら自由に飲むこともできないのが老人ホームだとしたら、それはそれで悲しいことだと思う