よむ介護

介護を通じて考えたことを書いていきます。

想像力のレッスン

あまり良いこととは思えないのだが、現在のわたしの部下には二十歳前後の若者が多い。そう一口に言っても、ここにたどり着くまでの経緯も個性もみんなバラバラだから、あまり一括りには考えないのだけど、おそらくひとまとまりに考えざるを得ないことというのがある。



それは、彼らは我々の仕事においてはぜひとも知っておかないといけないとある出来事について、あまりにも無知か無関心であるということである。



わたしより年上の職員と雑談をしているときに、ふと、いま新聞で慰安婦問題のことが再度話題になっているという話になった。そこで、ある若手職員は知ったかぶって「作り話だったとかいうやつでしょ」と真顔で言って来たのだが(そこでややブチ切れそうになるw)、別の職員はそもそもそうした存在すら知らなかった。



そんな職員にふと聞いてみた。「日本は昔どの国と戦争したか知ってる?」「日本が昔植民地支配していた地域はどこ?」。当然ながら、彼らはまともに答えることができない。自信なさげに「アメリカ?」「中国?」などと答えるだけだった。



勉強が苦手だから進学せずに就職したのかもしれない…だけど、日本が過去に行った戦争について、中高でも習うような歴史であるはずにも関わらず、あまりに知らなすぎやしないか。ちょっと、そういうことに危機感を覚えてしまった。



別に詳しく過去の戦争の経緯を説明出来る必要などないけど、最低限そこは押さえとかないと、というラインがどんどん下がっていっている、いまやそれが現実なのかとふと思ってしまった。



ところで、この仕事をする上で、果たしてそのような「知らぬ存ぜぬ」が通じるのだろうか。そこで次のようなお説教のことばが頭に浮かんだ。

 

だって、いまあなたたちがケアしている方たちはみんなあの戦争の苛酷さを経験し生き抜いてきた人たちなんだよ。あの戦争があって、貧しい時代を乗り越えて、いまに向かって歩んできて、そして人生の最期をまもなく迎えようとしている。その人達の生活を支えようとしているあなたたちが、戦争のことを何も知らないってどういうこと? それで、いま目の前にしている人たちの人生の何がわかるっていうの? 

 

いまからでも遅くないから少しでも昔のことに興味を持って、そしていま目の前に対峙している人たちがどんな社会で生きてきたのかを想像して欲しい。と同時に、そんなことを知らない若者が平然と高齢者の生活を支えようとしているということに、彼らより長生きしている先輩たちは想像力を働かせるべきだろう。