よむ介護

介護を通じて考えたことを書いていきます。

よりよい環境づくり

環境を整えるというのはとても難しいことだ。たとえば、わたしが生まれた家や育った土地、それらは「与えられた」ものでしかない。それを自らの意思で選び/変えることはできない。



しかし、全ての環境が所与なのではない。まずもってその「環境」の意味する範囲はとても広いわけだけど、物質的な有限性という意味でなければ、まだ意志的に介入することは十分に可能だ。



人的環境についてふと考えていた。「これじゃあどうしようもない」ということがいま現場で起こっているわけだけど、たとえばそういう状況でも誰か一人が方針なりヴィジョンを提示できる人がいれば、何かが変わるのかもしれない。「こうすればこの状況を突破できる」というメッセージが、バラバラになりそうな環境でこそ必要だ。そして、役職がつくということは、それをきっちり発信するということなのだと思う。



「環境を整える」の意味は多義的であって、誰かが無理しなくてもいい状況、それぞれがそれぞれの役割を果たせる、それは仕事上の安定ではあるし、しかし、一方でサービスを受ける側のことを忘れてはいけない。時代は小規模ケア、「顔なじみの関係」を重視するようになってきている。そんな中にあって、職員が入れ替わり立ち替わりという環境では、理想から程遠いであろう。また、顔なじみであることの意味は、必要なサービスやニーズをきめ細かく把握しそれに応えられるというクオリティ・コントロールの視点からも重要であるが、これも人的に安定しない状況ではままならない。



慢性的な人手不足、ということが言われる。しかし、いくら人がたくさんいても、素人の集まりだと何の意味もないのだ。つまり、能力のない人間にはできるようになるように教育しなければならない。それが環境を整えることの1つの意味だ。



そこまではいい。だけど、ここ数年経験してきたのは、育成してきた人たちが出て行ってしまうということ。つまり、続かないのだよね。そして、もし理想の環境に近づけるというのであれば、それでは困るのだ。ただその日その日の仕事ができることが「一人前」なのではない。まだまだその先があるからこそ、中途半端に入れ替わられたらダメなのだ。



環境を整えるというのは難しい。しかし、それを怠っては先へ進めない。残念ながら、サービスを受給する側は与えられた環境で生きていくしかない。そんな状況の中だからこそ、よりよい環境というのをイメージし続け、それに向けて動き続けるしかないのだろう。