すべる介護の話
介助技術に関する本はいくつも持っています。ただ、本当に参考程度に読むといった感じですね。技術って本だけではイメージをつかみにくいっていうのもあるんだけど、実際に本を読みながら介助するわけにはいかないので、自己点検みたいな感じですよね、使用価値としては。もちろん、経験を積み重ねると不要になっていく代物だとは思うんですよね。
ただ、たとえば後輩に指導するときとか、体格が違う職員に対して指導が必要なときとか、より安全で確実な方法はないか考えたりするときに、そういう本はネタ元として使えるかなとは思います。
さて、最近書店で見つけたおもしそうな「介助本」があったので、今回はこちらを紹介します。
滑らせる介助の技術―スライディングシート・トランスファーボードの使い方
- 作者: 市川洌,松本多正,滑らせる技術検討会
- 出版社/メーカー: 中央法規出版
- 発売日: 2014/05
- メディア: 単行本
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スライディングシート、トランスファーボードというのはどちらも福祉用具で、車いすとベッドの移乗のためなどに使用したりするものです。本書は、その二つの福祉用具の使い方を詳細に紹介した本というわけです。
その二つに絞って本を作ったというのがまず凄くて、言うまでもなく類書は存在しません。たとえば、ここ最近は腰痛予防が盛んに言われているので、そういう文脈で取り上げられることもあるとは思いますが、ここまで徹底的にこの二つの福祉用具の可能性と限界点を見定めた本はそうないと思います。
特にわたしがなるほどと思ったのは、上記の福祉用具を使った介助技術を「滑らせる介助」という視点で捉え返したことですね。言われてみれば確かにそうなんだけど、たとえば介護福祉士養成の生活支援技術のテキストなんかでは「自立支援」の視点が押し出されることもあり、残存機能を活用した介助技術は勉強するけど、こうした道具を使っての介助っていうのは詳しく勉強しないわけです。
福祉用具っていうのは実際には自立支援のツールとしても使えるわけですが、どうしても「おまけ」的(あるいは「応用」的)に扱われてしまうことが多かったと思うんですよね。それは、徒手的介護に対する専門家のある種の盲信や、福祉用具の普及率の問題も影響しているんだろうと思います。もちろん、これからは腰痛予防の観点も大事なので、そうした認識は改められるべきだと思います。
個人的には過去にトランスファーボードの研修も受けたことがあるし、実際に使ったことがあるからわかるんだけど、それなりにこれを使いこなすにはそれなりにコツがいるんですよね。そして、「この人に使いたい」と思っていた人に適応していなかったみたいなこともあって、導入するにあたってはそれなりのハードルがあるのも確かだと思います。
でも、だからこそ、こうした本でなぜそうした福祉用具を使用するのか、理論的な部分から実際の使用方法まで学べるのは、とても意義のあることだと思います。自分で説明するのが難しくても、これからは「この本に書いてある通りに・・・」と言えばいいわけですからね。
ということで、久しぶりに「当たり」の介助本を見つけたような気がします。実は最近、こうした福祉用具は使用していなかったのですが、また、導入を考えてみたいと思います。