よむ介護

介護を通じて考えたことを書いていきます。

幻想の中身こそ問われている!

先日に引き続き、ユニットケアについて書かれた本を取り上げます。本をたくさん出しておられ、なおかつ辛口トークでも知られる高口光子さんの本です。

 

ユニットケアという幻想―介護の中身こそ問われている

ユニットケアという幻想―介護の中身こそ問われている

 

 

本書には講演、パネルディスカッション、対談という形で、3つの異なる形態での高口さんのしゃべりが収録されています。どれも高口さんらしい語り口で、実際にその場で聞いていた人たちはその話の巧さに舌を巻いたことでしょう。

 

もう10年前の本なのですが、いまでも読む価値があります。それは、この前と同じような理由なのですが、介護現場の変革のプロセスが書かれているからです。そして、何かを変えていくためには、何より介護現場の職員の「あれをやりたい」という思いが大事だということ、それがはっきり伝わってくる内容だからです。しかも、その目指すべき方向というのは、まさに個別援助という、ユニットケアの理念とも言えるものなのです。別にそれを語るのに「ユニットケア」ということばを使う必要はないとは思うんだけど、与えられたものとしてではなく、自分たちでケアを築きあげることが大切だというのは、介護現場ではどこでも共通の価値なのだということは、よくわかる話です。

 

ここで大事なことを指摘しましょう。この本はユニットケアを真っ向から批判した本ではないということなのですね。サブタイトルにある通り、大事なのは介護の中身だよと言っているだけで、ユニットケアがその介護の中身を充実させるための試みであるなら、それは大歓迎というのが高口さんのスタンスなのです。

 

では、この本で表立って誰がユニットケアを批判しているのかというと、実はおなじみ三好大先生(対談相手として登場します)だったりするからアレなんだけど、まあ、いまの時代に三好先生の批判がズバズバ当てはまるようでは、それは困るだろうなあというのは思いますね(ユニット型なのに大浴場しかないとか、配属がころころ入れ替わるとか、入居者の居室を勝手に移動させるとかね)。

 

最後に、この本にはユニットケアが職員を疲弊させるというような話があって、それは例えば社会学者の阿部真大さんの本(『働き過ぎる若者たち』)なんかでも取り上げられているのだけど、やっぱりこういうタイトルをつけるんだったら、それなりに「幻想」の中身について取り上げてもらわないと面白くないなあ、と思います。

 

もし、ユニットケアに幻想なるものを抱いている人が多数いるというのなら、それは面白い話だと思うんだけどね。そういうのきちんと調査した人っていてないのかな?