よむ介護

介護を通じて考えたことを書いていきます。

知っているようで知らないあの役職について

 本日は、とある事情から生活相談員について勉強する必要が生じたので、そのことについて書かれた本をピックアップしました。梅沢佳裕さんの『生活相談員―その役割と仕事力』(雲母書房)という本です。

生活相談員―その役割と仕事力

生活相談員―その役割と仕事力

 

 まず最初に断っておきますが、わたしは生活相談員の仕事を現在しているわけでも、今後しようと思っているわけでもないということです。まあ、現にしてたらこんな本読まないかもしれないのだけど・・・

 

ただ、だからこそ、知っておかなければいけない部分があるのかあと思ったりします。

 

たとえば現場では、カンファレンスとかの機会に生活相談員とはいっしょになったりします。ただそこで、「あの人は果たして何をしているのか?」というレベルの理解だと何かと失礼にあたりますもんね。カンファレンスでは、多職種がそれぞれの専門性を活かした話し合いを行うわけですが、そこで得意とする分野や請け負うべき責任の範囲があいまいだと、意見を求めたり協力を得る上でも、何かと不都合ですよね。最悪な場合、相談員がすべきことまでこちらに押し付けられたら、そりゃ「お前何やねん」てな話になりますよ(って別に実例じゃないですよw ふだんから仕事の押し付け合いをしているわけではないですし)。ただ、お互いの得意分野を活かして、一人ひとりにあったサービスを提供していくのが、多職種連携の理想型ですよね。そのためには、それぞれの立場を理解しておくのは大切だと思います。

 

それはさておき、興味深いことに、書籍で生活相談員のことを調べようと思っても、一冊でそれについて書かれた本って少ないんですよね。

 

もちろん、ソーシャルワークに関する本なら山のように世の中には存在しているし、デイサービスの業務に特化した生活相談員本なんかも何冊かあります。そうじゃなくて、一般的な生活相談員のあり方についてまとまって書かれた本で探すと、この梅沢さんの本以外に見つからなかったんです。

 

あまりその手の本は必要とされていないのか、あるいは、それについて書くことができるライターがいなかったのか。理由はわかりませんが、デイサービスだろうが施設サービスだろうが、配置が義務付けられている生活相談員の仕事について書かれた本が少ないというのは、不思議な気もします。

 

さて、生活相談員になる気がないわたしが、どのようにしてこの本を読んだのかというと、「今後、生活相談員になることを希望している若手職員(いまは介護をしている)に、相談員になるための下地を形成するために何をすればいいのか」という点から読んでいきました。実際、相談員の仕事は先輩相談員に教わったらいいと思うのだけど、いまはまだその段階じゃないっていう状態で、何を知っておいたらいいのかなあ、と思ったわけです。まあ、そういう職員の育成を引き受けることになってしまった、というのが実情だったりするのですが(汗)

 

で、本を読んでみて、ひとつ「ああ、そうだよね」という部分がありました。それは、デイサービスで相談員をしているある人の事例なのですが、デイっていうのは、介護業務と相談員業務を兼任するケースが多いみたいなんですね(うちの施設のデイもそうなってますが)。そうすると、二つの仕事のかけもちみたいになるから、とても忙しくなったり、相談業務に手が回らなくなってしまったりするわけです。で、「相談員なのにそっちの仕事が疎かになる」みたいな悩みが出てくるわけです。

 

ここで大事なのは、同じ介護の現場でも「立場や職種によって、見方が違う」ということなんですね。たとえば、介護には介護の、看護には看護の視点があると思うのですが、利用者の立場からすれば、ひとつの時間と空間においてサービスが提供されているという点で体験されることはいっしょなわけです。それをどう解釈するか、そこが分かれ目ということです。

 

他の職員のように介護の仕事をしていても、生活相談員ならではの視点というのがあるのではないか、それを理解しておけば「わたし相談員なのになぜか介護ばっかりやっている???」という役職迷子ちゃんから脱出できるはず、というのがこの本での処方箋です。つまり、相談員としての視点は何か、それを明確にしようということです。

 

わたしは、それを読んで、「介護現場にいながらも、相談員的なセンスを発揮すれば、これは立派にOJTになるな」と思いました。そのために、具体的にどういうことを教えればいいのか、これはまた難しい話だったりしますが、まずは、いま現場で行っている介護をよりもっと広い視点で、そして利用者一人ひとりをより深く捉えることができればいいのではないかと、と考えました。そのためのアイデアをいま、その若手に注入している最中なのですが、果たして成果はでるでしょうか・・・

 

まあ、わたしはその程度の読み方しかしなかったのですが、この本にはそれ以外にも生活相談員として必要なスキルだったり、相談員としてのアイデンティティ・クライシスに陥らないためのあれこれが書いてあったりします。文章も平易でわかりやすいので、今後生活相談員を目指そうと考えている人にはぜひ読んで頂きたい本だと思います。